今回は買わず、利益が続くかと、仕入れに使ったお金の回収を確かめる。 トーメンデバイス〈2737〉は、上半期だけで前年同期の約5.3倍の純利益を稼いだ。それでも株価は1週間で25.54%下落した。
10月30日の終値は24,050円。会社の通期予想から計算すると、株価は1株利益の約5.5倍、予想配当利回りは約6.8%になる。数字だけなら魅力的だが、今の大きな利益が続くかは別の問題だ。日次株価・中間決算短信
今回の仮想運用での購入はゼロ。反発を逃す可能性は受け入れ、11月13日提出予定の半期報告書などで、在庫と資金の動きを点検する。提出日が来ただけで買うとは決めていない。
好決算の発表日に、株価は約22%下がった
過去より良い決算でも、これからへの期待を満たせなければ株価は下がる。 今回は10月28日の取引時間中に決算が公表され、同日の終値が大きく下がった。
| 日付 | 終値 | 確認したこと |
|---|---|---|
| 10月23日 | 32,300円 | 前週末の基準 |
| 10月27日 | 32,450円 | 決算発表前日の終値 |
| 10月28日 | 25,450円 | 13時に中間決算を発表。前日比21.57%安 |
| 10月30日 | 24,050円 | 前週末比25.54%安 |
28日の取引量は123万5,000株で、直前20営業日の平均の約6.4倍だった。決算をきっかけに評価が変わった可能性は高い。ただし、売った人の理由や、下落原因ごとの割合までは分からない。株価・取引量
同じ週のマクニカホールディングスは約5.3%安、加賀電子は約1.3%安。TOPIXに連動するETF〈1306〉はほぼ横ばいだった。事業の違いはあるものの、今回の下落を市場全体の弱さだけで説明するのは難しい。マクニカ・加賀電子・TOPIX連動ETF
半導体の値上がりが、大きな利益につながった
この会社を見るときは、半導体が何個売れるかに加えて、売る価格と仕入れる価格の動きが重要になる。 トーメンデバイスはサムスン電子製品を主に扱う商社で、足元ではデータを記憶する半導体「メモリ」の販売が売上の95.9%を占める。
2026年4〜9月の売上高は7,858億円、営業利益は375億円、純利益は251億円。前年同期比では売上高が約3.2倍、純利益が約5.3倍になった。サーバーや車向けの販売増に加え、メモリ価格の上昇が利益を押し上げている。中間決算短信・会社説明資料
ただし、「AIが伸びるから利益も同じ勢いで増える」とは限らない。買い手が必要以上に早く仕入れれば、その後に注文が減ることもある。会社も、顧客の在庫積み増しや、価格上昇による買い控えを懸念として挙げている。
前年より好調でも、直前の3か月より利益は減った
今回いちばん気になったのは、利益の勢いがすでに少し落ち着いていることだ。 4〜9月の合計だけでなく、前半と後半に分けると見え方が変わる。
| 期間 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|
| 4〜6月 | 3,956億円 | 223億円 | 145億円 |
| 7〜9月 | 3,903億円 | 153億円 | 106億円 |
7〜9月の数字は、中間決算から4〜6月の数字を引いて計算した。売上はほぼ同じだが、営業利益は約32%減っている。会社は、メモリの値上がり幅が小さくなり、4〜6月より利益率が下がったと説明している。第1四半期短信・中間決算説明資料
通期の純利益予想は300億円のまま。上半期で約84%まで進んでいるのに、10月には予想を引き上げなかった。7月にはすでに大幅な上方修正をしているので、「好決算なら今回も上がる」と単純には考えにくい。
私の見立ては、高まっていた期待に対し、利益の勢いが落ち着き、追加の上方修正もなかったことが売りにつながったというもの。ただし、発表前の市場予想を確認できていないため、「市場予想を下回った」とは断定しない。
急落しても、半年前より株価は高い
大きく下がったことと、以前より安くなったことは同じではない。 株価は4月30日の15,180円から、9月30日には38,300円まで上がっていた。10月30日の24,050円でも、4月末より約58%高い。
9月末からは約37%下がったので、期待の一部はすでにしぼんでいる。それでも、値上がり前に戻ったわけではない。今買うなら、「以前の高値に戻るはず」ではなく、現在の利益がどこまで続くかを考えたい。株価推移
会社予想の1株利益4,411.22円に対する予想PERは約5.5倍。PERは、株価が1年分の利益の何倍かを表す。ただし、利益が大きい年ほど低く見える。仮に将来の1株利益が3,000円なら、現在の株価は約8倍になる。
年1,640円の予想配当も同じだ。今の株価に対する利回りは約6.8%だが、この配当が毎年続くと約束されたわけではない。利益が減る局面では、配当も減る可能性を考えておく。業績・配当予想
利益だけでなく、在庫と借入も増えている
商品が売れて利益が出ても、そのための仕入れに多くのお金が必要になっている。 9月末の在庫は3,328億円で、3月末から1,113億円増えた。短期・長期の借入金は合計1,817億円ある。
販売が急増しているので、在庫や売掛金が増えること自体は不自然ではない。一方、価格が落ち着いて注文が減ると、仕入れた商品を予定どおりの価格で売り切れるかが問題になる。自己資本比率は17.2%から14.0%に下がっており、急拡大を利益の増加だけで支えているわけでもない。中間貸借対照表
前期の2026年3月期は、本業に伴う現金の出入りが約975億円のマイナスだった。在庫を大きく積み増し、借入も増やしている。これは前期の数字で、今回の上半期の現金収支と混同してはいけない。前期決算短信
今回の中間決算短信には現金収支の計算書がなく、上半期にどれだけ資金を使ったかは、この資料だけでは確認できない。ここを残したまま、利益や配当の数字だけで買うことは避けたい。
今回は買わない。安さより、利益の続き方を優先する
反発する可能性はある。それでも、今回は現金を残す方を選ぶ。 会社は下半期もメモリ需要が続き、価格は小幅上昇後に高い水準を保つと見ている。これが実現し、在庫を無理なく売れるなら、今の株価が魅力的だったという結果もあり得る。
一方で、利益率はすでに低下し始めている。今の価格を「安い」と判断するには、目先の300億円という利益予想だけでなく、その先の利益を見積もりたい。現段階では、その見積もりに十分な裏付けを持てていない。
したがって、仮想運用では新たに購入しない。11月13日まで待つ間に反発しても、それだけを理由に追いかけない。情報が増えた時点の利益見通しと、その時に買える価格を比べて判断する。
次は、11月13日予定の半期報告書を点検する
次に知りたいのは、増えた利益が資金回収につながっているかだ。 半期報告書の提出予定日は11月13日。決算短信に記載された予定であり、新しい決算発表日という意味ではない。提出予定日の出典
- 上半期の現金収支が開示されたら、在庫・売掛金の増加を、買掛金・前受金などでどこまで補っているか。
- 借入の条件や資金調達について、追加で気になる説明がないか。
- 在庫の評価や、価格・需要の変化について、短信より詳しい情報があるか。
- 利益率の低下が一時的と考えられるか。報告書で分からなければ、次の四半期資料も待って確かめる。
在庫が増えた理由と回収の見通しに納得でき、通常時でも十分な利益が残ると考えられたら、購入候補に戻す。半期報告書だけで解決しなければ、無理に買い判断を出さない。
※数値は2026年10月30日の終値と11月1日までに確認した公開資料に基づく。億円表示は四捨五入。仮想運用であり、実際の売買記録ではない。